さまざまな産業分野で製品に用いられる粒子材料。その性能を評価したり物理的性質を理解したりするには、粒径(粒子径)だけでなく粒子形状を把握することが重要です。そのため、粒子材料を用いる生産現場において、製品の品質や性能、製造プロセスを適切に管理するには、粒子形状を定量的に測定する必要があります。
ここでは、粒子形状の測定目的や代表的なパラメータについて解説。そして、4Kデジタルマイクロスコープを活用して粒子形状を自動測定する事例を紹介します。

粒子形状の自動測定・解析による評価の定量化

粒子形状測定の目的

粒子形状測定の対象物として代表的な製品分野の例と、粒子形状の測定によって評価する物理的特性を以下に挙げます。

製品分野 評価する物理特性
食品 ・食感/口あたり
医薬品 ・ドラッグデリバリーシステム(DDS)での粉体流動性
・取り扱いやすさ
製品の加工・処理 ・研磨剤(SiCなど)や工具などにおける研磨効率
・セラミックの焼結特性

粒子形状測定のパラメータ(円形度・アスペクト比・包絡度)

粒子形状測定のパラメータとしては「円形度(circularity)」が代表的ですが、ほかにも「アスペクト比(aspect ratio)」や「包絡度(周囲長包絡度[convexity] / 面積包絡度[solidity])」といったパラメータがよく用いられています。これら粒子形状を測定して評価するうえで重要なパラメータについて説明します。

円形度

粒子形状測定において最も広く使用されているパラメータが円形度です。一般に、粒子が完全な球体にどれくらい近いかを円形度で表します。摩滅性を持つ粒子の摩耗特性を評価する場合などに使用されるパラメータです。
投影面積をS、周囲長をLとしたとき、以下の式で求めることができます。円形度1は完全な円を指し、形状が複雑になればなるほど、円形度は1よりも小さい値になります。

円形度

アスペクト比・伸長度

X・Y・Z軸のうちの2つの軸の長さの比がアスペクト比です。針状、または卵形の粒子のような1つの軸上に異なる寸法を持つ粒子と、球体や正方形のような粒子を区別するために使用されます。
粒子の短軸径をa、長軸径をbとしたとき、その比(a/b)を求めることができます。円形や正方形のようにアスペクト比が1となる場合、細長さを示す「伸長度(elongation)」は0となります。伸長度は、以下の式で求められます。

アスペクト比・伸長度

包絡度

包絡度は、凝集した粒子を検出したり、表面粗さを評価したりする際に使用されるパラメータです。実際の粒子は複雑な形状を持っていますが、評価において各粒子の詳細な形状が不要である場合があります。そこで、周囲形状をある程度まで単純化することにより、評価を容易化できるパラメータが包絡度です。

包絡度を算出するには、かりに粒子の輪郭の周囲に輪ゴムを巻いたとき、伸長状態の輪ゴムの長さにたとえることができる「包絡周囲長」を用います。これは、粒子周囲長(端面接触)とも呼ばれます。

包絡度

この包絡周囲長から以下の式を使って「周囲長包絡度」や「面積包絡度」を算出することができます。

包絡度
包絡度

粒子の輪郭が滑らかであるほど、包絡度および面積包絡度の値は1に近くなります。一方で、凝集した1次粒子や粒子の輪郭が粗い場合は、包絡度および面積包絡度の値が1よりも低くなります。

次項では、これらのパラメータの算出に必要な測定値を取得する方法について解説します。

粒子形状の測定方法

立体的で複雑な粒子形状を測定するには、拡大した粒子の画像を2次元の投影図に変換する画像解析法を用いるのが一般的です。
粒子の画像に対して「2値化(2次元バイナリ)」という画像処理を行います。目的とする解析に最適な情報を抽出することによって、粒子形状の測定値を取得し、評価に必要な各種パラメータの特徴量を算出します。

2値化とは

多数の階調を持つ画像から2つの色に分けて変換する処理のことです。任意の範囲において、しきい値に応じて画素ごとの値を比較して2分類します。
画像を2値化することにより、必要な部分から任意の情報だけを抽出することが可能になるため、粒子形状の測定・算出の容易化と高速化が可能となります。

粒子形状測定での画像解析法

粒子形状測定のパラメータのなかでも、面積包絡度の測定・算出を例に画像解析法について説明します。

面積包絡度を画素数(pixel)で2値化して求める例を簡略図に示します。画像において13 pixelを実際の粒子の面積、25 pixelを包絡周囲長の面積として定義することにより、下記の値を算出することができます。

粒子形状測定での画像解析法
粒子形状測定での画像解析法

次に鮮明な4K画像取得とインテリジェントな自動測定・解析機能により、定量的な評価を簡単に実現する4Kデジタルマイクロスコープの活用事例を紹介します。

粒子形状の自動測定・解析事例

粒子の画像から正確な測定値を得るには、まず最適な条件で顕微鏡で粒子を拡大して鮮明に撮像する必要があります。また、視野内に多数存在するすべての粒子に対してバラつきのない粒子形状測定による信頼性の高いパラメータの算出が求められます。
しかし、粒子の撮像時の条件出しや対象物へのフォーカスは難易度が高く、測定者には習熟性や高い技術が求められます。さらに、経験豊富な測定者であっても、重なり合った粒子の測定は困難であることも課題として挙げられます。

キーエンスの超高精細4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、正確な粒子解析にふさわしい鮮明な画像の取得ができる先進的な光学系やフル電動のハードウェアを装備。簡単な操作で多彩な機能を活用することができる観察システムが、解析作業を強力にサポートします。そして、取得した4K画像を自動解析する機能により、従来は難しかった高度な測定・解析を簡単かつスピーディに行うことができます。
以下では、「VHXシリーズ」を活用した粒子の鮮明な拡大画像の取得や粒子形状の自動測定・解析の事例を紹介します。

粒子形状の測定・解析における4Kデジタルマイクロスコープでの自動化・効率化

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、一般的な光学顕微鏡の20倍以上の深い被写界深度と高分解能を両立した光学系や4K CMOS、独自の観察システムを採用。高精細な4K画像を簡単に取得することができるため、誤検出や誤認識を回避し、正確な測定・解析を実現します。
従来は多くの時間を要した照明の条件出しも、ボタン1つで全方向からの照明で撮像した複数の画像データを自動取得する「マルチライティング」機能で時間短縮が可能です。目的に合った画像を視覚的に選ぶだけで素早く観察や解析を開始することができます。また、過去の画像を選ぶだけでそのときの条件を完全再現することが可能なため、試料の個体や測定者が変わっても同一条件下での測定・解析が実現します。

そして、「自動面積計測・カウント」機能を使って、取得した画像から選択した範囲の粒子の自動測定・解析をシームレスに実行可能。粒子の正確なカウントや円形度・最大径・最小径・周囲長包絡度・面積包絡度のほか、それらの平均・標準偏差・最大値・最小値・総計など、サブミクロンオーダーの詳細な数値を自動的に計測・算出して一覧表示することができます。
たとえば、各粒子の最大径と最小径の比率からアスペクト比を求めたり、高いコントラストの画像を活かし、各粒子の面積包絡度を高精度に取得したりすることも可能です。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での粒子形状の自動計測・解析
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での粒子形状の自動計測・解析
透過照明(×500)
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での粒子形状の自動計測・解析
透過照明 +自動面積計測・カウント(×500)

粒子形状測定・評価を定量化・高速化する4Kデジタルマイクロスコープ

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、鮮明な4K画像の取得や自動測定・解析を簡単な操作でスムーズかつスピーディに実行でき、評価の定量化を実現することができます。
また、「VHXシリーズ」に直接Excelをインストール可能であるため、任意のテンプレートで数値と画像を出力してレポートを自動作成します。粒子の拡大撮像から測定・解析、レポート作成まで一連の作業をシームレスに行え、粒子測定の業務の大幅な効率化が実現します。

粒子形状測定を強力にサポートする「VHXシリーズ」の詳細に関しては、以下のボタンよりカタログをダウンロード、または、お気軽にご相談・お問い合わせください。